文学散歩

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2年ぶりに東京を訪れた。

遠いからなかなか足が向くこともないが、それでも5年に一度くらいのペースで訪れている。

実は予てから、一人で歩きたい道があった。

どんなコースなんだと疑問に思われるだろうが、夏目漱石「こころ」下編の作中で「私」が親友「K」を欺いて下宿の奥さんから、娘さんとの結婚の約束を取りつけた後、黙々と歩き続ける場面があり、その辿ったルートがこれだ。

 

ざっくり説明した場面のあらすじでも、かなり複雑なシーンである。古い映画や、いくつかのドラマで描かれもしてきたが、どうも納得のいく再現は無かった。(ドラマではスキップしながら歩いてた)

複雑に心にモヤがかかっている時、男心は歩き回るというのが持論である。ぜひともこのルートを歩きながら検証してみたい、というのが動機であった。

 

 

漱石作品には頻出する「伝通院」をスタート地点に決めて目指す。繁華街にはない「静」の東京が現れる。

作中と同じではないだろうが、今時地方でも珍しい粋な古書店をひやかす。

いいじゃないか。若い頃には理解できなかった、リアルな東京を感じながら歩く。

伝通院に到着。ここから南下をはじめる。

なだらかな勾配の繰り返しが続き、他の都市ではない街並みを味わいながら、飯田橋方面を目指す。

ちょうど飯田橋に差し掛かった頃に昼時をむかえ、腹を満たすために立ち食いそば屋を探す。

安上がりだが、どうもこれを食べないと、東京に来た実感がわかない。

 

静かな住宅地を抜け、繁華街をかわしながら、外堀通りを東へと向かう。

このような立体的な風景に東京を感じる。

徒歩でも、車やバイクでも道なりに進みながら、どこに連れて行かれるかわからないアップダウンに旅情をくすぐられる。

 

約120年前とはまったく違うであろう風景と全行程6kmという、婚約の申し込みの後の散歩にしては長すぎるが、やはりにらんだ通り持論に近いモヤモヤした気持ちを晴らすための道のりだったことが実際歩いてみてわかった。傍目には理解不能な聖地巡礼かもしれないが、僕の中では大きな収穫があった。

 

帰りの新幹線からは、これまで天候不順で見れたことの無かった美しい富士山。

こんな風景も太宰には俗っぽいと評されるんだろうか。

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